メンバー

平野 有沙
筑波大学 医学医療系・国際統合睡眠医科学研究機構

班員プロフィール

平野 有沙(筑波大学 医学医療系・国際統合睡眠医科学研究機構)
平野 有沙

筑波大学医学医療系・国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)所属。

睡眠などの多くの生理現象は約1日の周期のリズムを示し、このようなリズムは体内時計(概日時計)によって制御されています。睡眠不足やシフトワークによる体内リズムの乱れが体の不調を引き起こす一方で、加齢によって体内リズムは弱くなり、夜に深い睡眠をとることができなくなります。私たちは体内リズムの乱れが老化を促進する分子メカニズムと、老化細胞の除去が体内リズムに及ぼす影響を明らかにすることで健康寿命の延長を目指しています。

研究内容

1. 体内時計の時刻調節を行うメカニズムを簡便に測定する方法を開発

多くの生物は1日周期で生じる光や温度の環境変化に適応するため、概日時計(体内時計)を備えています。シフトワークなどにより環境リズムと体内リズムとのズレが生じた状態は概日リズム障害と呼ばれ、様々な疾患のリスクファクターとなります。本研究では、同調刺激に対する体内時計の応答を簡便に測定する方法を考案しました。研究成果は、概日時計が環境や生体内の刺激に合わせて時刻を調整するメカニズムの解明につながるとともに、時差ボケや概日リズム障害の治療薬の開発への応用も期待されます。

2. アリピプラゾールの概日リズム睡眠障害の改善効果の作用機序の解明

重度の夜型(睡眠相後退型の概日リズム睡眠障害)は社会生活への適応を下げるだけでなく、フレイルの増悪など老化と関連した生体機能低下の要因となりうることが知られています。本研究では睡眠相後退症候群に効果があるとされながら、その作用機序が不明であるアリピプラゾールに着目し、その体内リズムへの影響を明らかにしました。アリピプラゾールはセロトニン1A受容体を介して体内時計の中枢である視交叉上核に作用して細胞間同調を低下させることにより、外界環境への適用を促進する作用がありました。アリピプラゾールは従来、統合失調症などの治療に用いられてきましたが、本研究により概日リズム睡眠障害の治療薬としての適用が期待されます。